
周旋屋を経て変わりゆく不動産会社の営業スタイル
私がこの業界に身を置いて、早30年が過ぎようとしています。
私がこの業界に入ったころ、不動産屋は今とはまったく違う顔をしていました。
私が初めて接客し始めた頃、お客さん方は不動産屋が怖いとガードが硬く、私のお伝えすることが100%信用していただけないようなことも多々ありました。
昔は、不動産会社のことを「周旋屋」「口入れ屋」などと呼び、口八丁手八丁で一般の方をだまくらかし、相場よりも安く売らされたり、高く買わされたり、条件が悪い不動産をつかまされたりすることが多かったそうです。
そのころは、今のようにインターネットが発達しておらず、不動産会社の言葉がほとんどすべての情報源でした。このため、お客様も言いなりになって売らされたり、買わされたりしていたと思います。
時は流れ、30年経った今、時代はどうでしょうか?
ネットを見れば情報が氾濫し、お客様の方が情報を見すぎて頭でっかちになっていたり、振り回されていたりすることも少なくありません。
先日ハウスメーカーの人間と話をしていましたが、一戸建ての気密性が最近は重要なポイントとなっており、気密性の測り方を巡ってお客様と意見が食い違い、契約が流れたこともあったそうです。ハウスメーカーの担当が伝えたことを、まともに信用していただけない、情報過多の世の中になってしまいました。
年齢だけを重ねてしまい、不動産会社の担当者は、私よりもどんどん若くなっていますが、最近の若い担当者の方はすごく行儀が良いです。
大手の担当者ほどスマートで、話の内容も契約書のやり取りもきっちりしていて非常にプロフェッショナルです。関係もスマートです。私のような年配にも忖度せず、「だめなものはだめ」とその場ではっきり言ってくれるので逆にありがたいと感じています。
しかしながら、昔の不動産会社の先輩たちは、面白みのある話を私にたくさんしてくれました。「こんなときは、こうして売ったらええねん」「あんな時はあーやってこうやって話したらええねん」といったような、現場で役立つ知恵がいっぱいでした。このようなと面白みのある業界話が少なくなっていっているのも肌で感じます。
ある不動産業者が言っていました。「家電量販店のように不動産情報を陳列棚に並べて興味がある紙を持ってきていただいて、カウンターで商談するようなケースがこれから増えていくんじゃないでしょうか」と。
つまり、不動産会社が、あれこれアドバイスするのは非常におこがましい時代になっていると。お客様がご自身で調べ、判断なさって契約をしていく。そして、不動産会社はそのサポートをする役割に変わる、というわけです。
「不動産の営業はAIにとって代わられることはないんだろう」と思っていましたが、こんな時代がすぐそこに来ているのかもしれませんね。