
不動産経済研究所(東京都新宿区)は2024年の「新築分譲マンション市場動向」を発表しました。首都圏編と近畿圏編について見ていきたいと思います。
首都圏の販売戸数 前年比14.4%減 23区着工減などが要因
まずは「首都圏編」からです。東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県の1都3県における新築分譲マンションの販売戸数は、前年比14.4%減の2万3,003戸となりました。この数字は、1973年以降、最少の販売戸数となりました。
エリア別に見ると、東京23区が36%のシェアを占め、8,275戸が販売されました。続いて、東京都下は2,041戸、神奈川県は4,917戸、埼玉県は3,313戸、千葉県は4,457戸となっています。
同研究所の担当者によると、販売戸数の減少には主に2つの要因があるといいます。1つ目は、2023年に東京都23区で供給数が多かったため、2024年に回ってくる物件が少なかったことです。2つ目は、2023年から2024年にかけての着工数が少なかったためだと考えられています。東京23区が約40%のシェアを占めるものの、23区では前年から30%減少となりました。
一方、初月契約率は、66.9%で、昨年より3.4ポイントダウンし、4年ぶり(2020年以来)に70%を割りました。
1戸あたりの平均価格は7,820万円となり、昨年から3.5%ダウン。平米単価は4%ダウンの117万7,000円となりました。「目玉となる物件が少なく、小規模な物件が多かったことも影響しています」(担当者)
平均価格および平米単価をエリア別にみると、
東京23区は1億1,181万円・平米単価171万円(前年比2.6%ダウン・1%ダウン)、
東京都下は5,890万円・平米単価89万円(同8.9%アップ・9.5%アップ)、
神奈川県は6,432万円・平米単価98万1,000円(同6%アップ・5.3%アップ)、
千葉県は5,689万円・平米単価80万9,000円(同18.9%・15.2%アップ)、
埼玉県は5,542万円・平米単価84万9,000円(同13.8%・10.7%アップ)となり、23区以外は上昇しました。
前述の担当者は「郊外の物件では、工事費を価格に反映させるとエンドユーザーの購入意欲が低下しやすくなります。一方、都心の物件は高値で売れるため、売り手側が強気の価格設定を維持するケースが見られます」と指摘しています。
億ションは3,600戸 最高額は「クラッシィタワー新宿御苑」20億円
供給戸数のうち、億ションは前年より526戸少ない3,648戸でした。最高額は住友商事×三菱地所レジデンスが手掛ける「クラッシィタワー新宿御苑」20億円でした。なお、クローズド販売の物件は含まれていません。
2025年について、供給数は2万6,000戸となる見込みで23区の供給が回復すると見られています。人気を集めそうな高輪や池袋、大崎エリアに大型タワーマンションの供給がスタートしています。前述の担当者は、今後の価格予測について「このような状況であることから、価格、契約率ともに上昇し、回復すると見込んでいます」と解説しました。
販売価格(5,357万円)、平米単価(90.7万円)ともに連続アップ
次に、「近畿編」を見ていきます。2府4県(大阪府、兵庫県、京都府、奈良県、滋賀県、和歌山県)の販売戸数は、前年比1.6%減の1万5,137戸。3年連続で減少しました。
エリア別に見ると、大阪市部が4,890戸、大阪府下3,910戸、神戸市部2,036戸、兵庫県下1,682戸、京都市部1,538戸の順となりました。販売戸数の減少について同社大阪事務所の担当者は「売り絞りは一部あるものの、供給数が少なかったためと見ています」と解説しています。
「グラングリーン大阪 THE NORTH RESIDENCE」最高価格25億円
一方、初月契約率は74.3%と、昨年より2.9ポイントアップし、3年連続70%超になりました。
1戸あたりの平均価格は5,357万円となり、昨年より14.8%アップで、1991年の5,552万円以来の高値となりました。平米単価も14.8%アップの90万7,000円となり、こちらは1973年の調査開始以来、最高値を4年連続で更新しました。
指標を平均価格および平米単価をエリア別にみると、
大阪市部は6,126万円・平米単価116万6,000円(前年比45.7%アップ・29.3%アップ)、
大阪府下は4,827万円・平米単価73万2,000円(同2.4%ダウン・5.2%アップ)、
神戸市部は4,605万円・平米単価94万5,000円(同7.1%ダウン・10.1%アップ)、
兵庫県下は5,546万円・平米単価78万7,000円(同5.8%アップ・8.9%アップ)、
京都市部は5,610万円・平米単価104万円(同1.9%ダウン・6.4%アップ)、
京都府下は4,755万円・平米単価62万5,000円(同0.9%アップ・0.8%ダウン)
奈良県は4,791万円・平米単価66万4,000円(同5.1%アップ・6.8%アップ)
滋賀県は4,417万円・平米単価60万6,000円(同6.2%アップ・2.4%アップ)
和歌山県は4,697万円・平米単価65万8,000円(同10.9%アップ・18.3%アップ)となりました。
大阪市部の平均価格が、昨年と比べて約46%アップとなった要因には「グラングリーン大阪 THE NORTH RESIDENCE」が影響しています。こちらの最高価格は25億円となりました。
今後の動向について前述の担当者は、「大阪中心部では今後さらに土地の確保が難しくなるため、郊外への拡大が進むと予想されます。また、購入層の動向を考えるうえで、金利の変化にも注視する必要があります」と述べました。
都心部・郊外ともに市場の変化が続くとみられ、価格動向や供給の動きが注目されます。開発計画や経済情勢が住宅市場にどのような影響を与えるのか、引き続き目が離せません。
今後の動向をチェックして、改めてお伝えできたらと思っています。
不動産経済研究所 首都圏 新築分譲マンション市場動向 2024年のまとめ
https://www.fudousankeizai.co.jp/
不動産経済研究所 近畿圏 新築分譲マンション市場動向 2024年のまとめ
https://www.fudousankeizai.co.jp/share/mansion/614/ss2024.pdf
https://www.fudousankeizai.co.jp/share/mansion/613/kk2024.pdf