
メディア報道と現場感覚の乖離が浮き彫りに
不動産価格は今もなお、高騰しており、一般消費者から「今後どうなるのか?」という不安や疑問の声が多く聞かれます。
しかし、ニュースなどで不動産価格の今後の動向や実績が報道される度に「まだ上昇する」「高止まりがつづく」といった内容が大半で、「ほんまかいなぁ」と首を傾げたくなります。
不動産経済研究所などが公表する新築分譲マンションの初月契約率などを見ると、近畿圏における2025年4月のマンション平均価格は、5300万円超で、契約率は77.0%と好調、4カ月連続の70%超だそうです。
即日完売マンションの平均価格は6000万円超と言われています。これも「ほんまかいなぁ」「そんなに高所得層の方がいらっしゃるのか」・・・
これらがを全て事実だとしても、実際に前線でエンドユーザーに接触している私たち不動産営業は「もうお客様のパイが無いぞ」という実感があるのです。
新築分譲マンションの販売であれば、プロモーション戦略をして、ターゲットとなる層の来場呼び込む工夫がなされています。
しかし、町の不動産会社は、その他大勢の、平均的な所得層のお客様をターゲットにしています。中古不動産の価格も上昇していますが、毎月コンスタントに、5000万円超の物件を複数成約できるかといえばもう限界です。中古物件をご検討されるお客様で、5000万円以上のローンを組んで返済可能なお客様はごくわずかです。
これが我々不動産営業が肌で感じているリアルな現実のごく一部です。
「マイホームが欲しい」20代の若者、ほぼ皆無
では一般的な消費者の方々は不動産ご購入についてどのようにお考えなのか?
最近、私自身が「不動産会社の者である」という身分を伏せた上で、20代の複数の方とお話しする機会がありました。内容は割愛しますが、「マイホームとして不動産を購入したい」と考えている人はほとんどいませんでした。その理由は、昔ほどマイホームを持つことにステイタスを感じることが無くなってきているように思います。
昭和世代にとって年頃になると「まずは自分の車」を手に入れ、一定の年齢を超えると「自分の城=マイホームを手に入れる」ことが成功者の象徴だったような気がします。
しかし、昨今、若い世代は車すら所有せず、カーシェアリングやレンタカーで十分という考え方が主流ではないかと思います。
「収益不動産が欲しい」という声は聞きしましたが、「自分が住む家を持ちたい」「マイホームが欲しい」という意見はごく少数派だったように思います。
もちろん、結婚して、新しい家族ができれば考え方も変わるのでしょうが、この世代の過半数がマイホームを持つ感じがしませんでした。
それよりも、FXや仮想通貨や収益不動産に興味があるそうで、「資産」を重視する傾向にあります。
とはいえ、この世代の方々が10年後、我々のマーケットの中心となるのも、また事実です。
ひょっとすると我々は将来価値の無いものに値段を付け、評価を無理矢理しているのかもしれません。
今までのように、もう家は売れないような気がしました。
今後の不動産の価値とは、「マイホーム」という住まいではなく、「収益力の高い不動産」なのかもしれません。