金利が変われば住宅ローン支払いはどう変わる?

かつての金利と住宅購入事情

私は平成七年から不動産業界に入り、主に実需物件、いわゆるマイホームの営業に携わってきました。

平成七年頃はバブルが崩壊したといえど、まだその余波で物件価格は高止まりしており、住宅ローンの金利も高い時代でした。私は平成10年に初めてマイホームを買いましたが、新築には手が出ず、中古の戸建てを購入するのが精一杯でした。

当時、金利は、住宅金融公庫で約3%程度。その後、下がり「公庫金利が3%を割った!」など大きなニュースになっていましたが、いまと比べるとかなり高かったことが分かります。

当時、自己資金が少ない中で住宅を購入した場合、毎月の返済は賃貸の家賃をはるかに上回るケースが多くありました。しかし、今よりも好景気で賞与が大きく期待できたので、月々の返済を抑えて、ボーナス時に大きく返すという返済方法を選ぶ方が多数派でした。毎月のランニングコストは変えずに、ボーナスで家を買う感覚ですね。

大阪市内の3LDK新築マンションが7,000万円 一方、金利も上昇…

そして時代は移り、空前絶後の低金利時代がやってきます。
物件価格も下がり、「住宅ローンは借りた方が得」といった考え方が広まりました。自己資金があっても、諸費用や引っ越し費用まで含めて住宅ローンを組み、家を買う人が激増。ボーナス払いなしでも家賃以下の月々返済、という逆転現象が珍しくなかった時代です。

そして現在。私の30年の不動産経験の中でも、今ほど不動産価格が高騰している時期は初めてです。一方で住宅ローンの変動金利は、まだ低めに推移しており、チグハグな、むずがゆいような状況が続いています。

例えば、大阪市内において、新築3LDKマンションの平均価格は7,000万円です。かなりの高所得世帯でなければ手が出ない価格帯ですが、それでも共働き夫婦で購入するご家庭は少なくありません。

今は、安い金利の住宅ローンを利用してフルローンで家を購入し、家賃を上回る返済に挑むケースが増えています。しかし最近は、半年ごとにじわじわと金利が上がっており、「1年前より毎月の返済が1万円増えた」という話も珍しくありません。

仮に金利が平成7年ごろの水準まで金利が上がった場合、返済が困難となり、破綻する世帯が多数出ることは想像に難くありません。

不動産業界で30年近く仕事をしてきましたが、今ほど「金利上昇が現実味を帯びてきた」局面は、かつてありませんでした。

バブル期は、高い不動産価格とともに所得も上昇していたため、ある程度バランスが取れていました。しかし、今はそうではありません。所得は横ばいか、実質的には目減りしています。

こうした状況の中、ローンを組んで家を買うべきではないかもしれません。

「何かが、歪んでいる」今の市況に、そんな違和感を覚えています。