
近年、物件価格の高騰が続く中で注目を集めているのが「未入居物件」です。
未入居物件とは、一度も居住されていない状態で販売される住宅のこと。
新築同様の状態でありながら価格は新築よりも抑えられているため、「お買い得な選択肢」として人気が高まっています。
しかし、住宅ローンという観点で見た場合、未入居物件は少し特殊な立ち位置にあります。新築とも中古とも異なる住宅ローンの取り扱いを理解しておかないと、思わぬ不利益を被る可能性もあるのです。
この記事では、未入居物件を購入する際の住宅ローンの取り扱い、注意点、そして新築・中古との違いについて詳しく解説します。
マイホーム購入を検討している方にとって、未入居物件が本当にお得な選択肢なのかを判断する材料として、ぜひ最後までお読みください。
未入居物件とは?その定義と市場での位置づけ
未入居物件の定義について、まず明確にしておく必要があります。
未入居物件とは、建物が完成しているにも関わらず、これまで一度も居住用として使用されていない物件のことです。
未入居物件が市場に出回る理由は様々です。
建築会社が販売予定で建てたものの買い手がつかなかった場合、投資用に購入したものの賃借人がつかずに売却に至った場合、転勤などで入居前に売却することになった場合などがあります。
近年の不動産市場では、新築住宅価格の高騰により「新築に近い状態で、より手頃な価格の物件」を求める傾向が見られ、未入居物件への関心も高まっています。
未入居物件の価格は、一般的な新築物件に比べ、値引きが期待できます。
しかし、住宅ローンの取り扱いについては、この価格メリットを十分に活かせない場合もあるため、注意深く検討する必要があります。
未入居物件の住宅ローン扱い|新築?それとも中古?

まず、未入居物件が「新築」なのか「中古」なのか、住宅ローン上での分類を確認する必要があります。
この分類は、住宅ローンの金利や諸条件に大きく影響するため、購入前に必ず確認しておきたいポイントです。
注意:分類基準は金融機関により異なります
建物が完成してから時間が経過している場合、金融機関によっては「中古物件」として扱われることがあります。
たとえ一度も住まれていない未入居物件であっても、築年数等により判定が分かれる場合があります。
この分類は、住宅ローン控除の可否や、ローンの金利優遇条件に影響することがあります。
一般的な傾向(金融機関により異なるため要確認):
- 築1年未満:新築扱いの可能性が高い
- 築1年以上:中古扱いと見なされることが多い
物件自体が新しいかどうかではなく、築年数と所有期間が重視される点に注意が必要です。
特に、建築確認済証の交付日や登記日を基準とする金融機関も多いため、これらの書類を事前に確認することが重要です。
また、売主が個人か法人(不動産会社等)かによっても取り扱いが異なる場合があります。
法人が売主の場合、「新築分譲住宅」として扱われる可能性が高く、個人が売主の場合は「中古住宅」として扱われることが多いのが実情です。
金融機関ごとの判断基準の違い
重要:以下は一般的な傾向であり、実際の判断は各金融機関で異なります。必ず事前に確認してください。
- メガバンク系:明確な基準を設けている場合が多い
- 地方銀行:地域や銀行により判断が分かれる傾向
- 信用金庫・信用組合:比較的柔軟な対応を取る場合が多い
- ネット銀行:明確な基準を設けているところが多い
購入を検討している未入居物件がどの分類に該当するかは、複数の金融機関に事前相談することをおすすめします。
住宅ローン控除(減税)の適用条件と注意点
住宅購入時の大きなメリットのひとつが「住宅ローン控除」です。
2024年度の住宅ローン控除制度の概要
現在の住宅ローン控除制度では、年末の住宅ローン残高の0.7%を所得税から控除することができます。この制度は、令和4年1月1日から令和7年12月31日までの間に居住した場合に適用されます。
控除期間と借入限度額
住宅の性能により控除期間と借入限度額が異なります:
新築住宅の場合(2024年度):
- 認定住宅:借入限度額5,000万円、控除期間13年
- ZEH水準省エネ住宅:借入限度額4,500万円、控除期間13年
- 省エネ基準適合住宅:借入限度額4,000万円、控除期間13年
- その他の住宅:借入限度額3,000万円、控除期間13年
中古住宅の場合:
- 全ての住宅:借入限度額3,000万円、控除期間10年
※子育て世帯・若者夫婦世帯については、一部優遇措置があります
未入居物件での住宅ローン控除適用の注意点
未入居物件で住宅ローン控除を受けるには、以下のポイントが重要です:
- 築年数と所有期間:新築扱いか中古扱いかの判定
- 売主が個人か法人か:法人売主の場合は新築扱いの可能性が高い
- 登記日と入居日:これらの日付によって適用条件が変わる可能性
- 住宅の性能:省エネ性能等によって控除額が変わる
重要:具体的な適用可否は税務署や税理士に必ず確認してください
省エネ基準を満たさない住宅でも、2023年中に建築確認を受けているか、2024年6月30日以前に建築された場合は、借入限度額2,000万円、控除期間10年で控除を受けられる場合があります。
控除額の計算例
参考例:3,000万円の借入れの場合
- 新築扱い(13年間):年間最大21万円(3,000万円×0.7%)×13年=最大273万円
- 中古扱い(10年間):年間最大21万円×10年=最大210万円
- 差額:最大63万円
注意:この計算は簡略化した例です。実際の控除額は所得税額や住宅ローン残高により変動します。
未入居物件の金利優遇と金融機関の対応

住宅ローンにおいて、金利の優遇は大きな関心事です。多くの金融機関では「新築住宅」に対して金利優遇を設けていますが、未入居物件の扱いは金融機関により大きく異なります。
金融機関の対応について
重要:以下は一般的な傾向であり、実際の条件は各金融機関で確認が必要です
未入居物件のローン審査はケースバイケースです。金利や融資条件に影響するため、購入前に複数の金融機関に確認することが肝心です。
融資条件の比較検討
金利以外にも、以下の融資条件についても確認が必要です:
- 融資限度額:新築と中古で異なる場合がある
- 返済期間:物件の築年数により制限される場合がある
- 頭金の要件:中古扱いの場合、頭金を多く求められることがある
- 保証料:物件の分類により保証料率が変わる場合がある
これらの条件を総合的に比較検討することで、最適な融資先を選択できます。
新築・中古・未入居の住宅ローン比較
比較項目 | 新築住宅 | 未入居物件 | 中古住宅 |
---|---|---|---|
物件価格 | 高め(市場価格) | 新築より安い(要確認) | 築年数により変動 |
住宅ローン控除 | 最大13年間適用 | 築年数等により可否 | 最大10年間適用 |
金利優遇 | 新築向け優遇対象 | 金融機関により異なる | 中古向け条件 |
保証制度 | 新築住宅保証 | 売主による(要確認) | 限定的 |
状態 | 新品 | 未使用(経年の可能性) | 使用歴あり |
融資条件 | 新築向け条件 | 金融機関により異なる | 中古向け条件 |
重要:未入居物件は制度上の分類が不明確なため、事前の確認が極めて重要です
未入居物件購入時の具体的な手続きと流れ

未入居物件を購入する際の具体的な手続きの流れを説明します。
1. 物件情報の収集と確認
まず、物件の詳細情報を収集します。特に以下の点を重点的に確認しましょう:
- 建築確認済証の交付日
- 登記日(表題登記・所有権保存登記)
- 売主の属性(個人・法人)
- 未入居となっている理由
- 保証やアフターサービスの有無
2. 金融機関への事前相談
複数の金融機関に事前相談を行い、以下の点を確認します:
- 新築扱いになるか中古扱いになるか
- 適用される金利と優遇条件
- 融資限度額と返済条件
- 必要書類と審査期間
3. 税務上の取り扱い確認
税理士や税務署に相談し、以下の点を確認します:
- 住宅ローン控除の適用可否
- その他の税制優遇措置
- 必要な証明書類
4. 契約条件の交渉
未入居物件特有の交渉ポイントがあります:
- 保証期間の確認と延長交渉
- 設備の動作確認と保証
- 経年劣化部分の修繕責任
- 住宅ローン控除が適用されない場合の価格調整
後悔しないためのチェックポイント
未入居物件購入で後悔しないためには、以下のチェックポイントを必ず確認しましょう:
財務・税務関連のチェックポイント
- 金融機関に分類を確認する:複数の金融機関で確認し、最も有利な条件を選択
- 住宅ローン控除の適用可否を確認する:税務署や税理士に相談
- 総返済額を複数パターンで計算する:新築扱い・中古扱いそれぞれの場合で比較
物件状態・保証関連のチェックポイント
- 売主の保証・アフターサポートを確認する:未入居でも経年劣化の可能性がある
- 設備の動作確認を徹底する:長期間使用されていない設備の不具合リスク
- 建物の状態を専門家に診断してもらう:ホームインスペクションの実施を検討
法的・契約関連のチェックポイント
- 重要事項説明書の内容を詳細に確認する:未入居の理由や経緯を明確にする
- 契約不適合責任の範囲を確認する:売主の責任範囲と期間を明確にする
- 火災保険の取り扱いを確認する:新築扱いか中古扱いかで保険料が変わる場合がある
まとめ|制度を理解して、本当に"お買い得"な選択を
未入居物件は、見た目も中身も新築同様でありながら、価格的には抑えられた魅力的な選択肢です。しかし、住宅ローンの取り扱いについては「新築」「中古」いずれの制度にも完全には当てはまらないため、事前の確認と理解が必要です。
特に重要なのは、以下の3つのポイントです:
- 住宅ローン控除の適用可否:新築扱いか中古扱いかで控除額に大きな差が生じる可能性
- 金利優遇の適用条件:金融機関により取り扱いが異なるため、複数機関での確認が必要
- 保証・アフターサービス:未入居でも経年劣化のリスクがあるため、保証内容の確認が重要
重要:この記事の内容は一般的な傾向を示したものです。実際の取り扱いは金融機関、税務署、不動産会社により異なります。購入前に必ず各専門機関に直接確認してください。
ローン金利、控除制度、保証の有無など、多角的にチェックした上で契約すれば、未入居物件は「お買い得な住宅」になり得ます。
物件価格の節約だけでなく、長期的な住宅コストの最適化という観点からも、未入居物件は有力な選択肢となるでしょう。
「見た目が新築だから安心」ではなく、「制度上の立ち位置を確認してから購入する」ことで、後悔のないマイホーム選びを実現しましょう。
専門家のアドバイスを積極的に活用し、総合的な判断で最適な住宅を選択することが、長期的な満足度向上につながります。
参考情報・確認先
- 住宅ローン控除について:国税庁ホームページ、税務署
- 金融機関の融資条件:各金融機関の住宅ローン担当部署
- 物件の法的状況:不動産会社、司法書士
- 建物の状態:建築士、ホームインスペクター
注意:制度は変更される可能性があります。最新情報は必ず公式情報源で確認してください。